イモリ:こんにちは長田さん、私、イモリと申します。絵本作りに興味があるんです。絵本の描き方、教えてください。
長田さんは普段、どんなことを考えながら、絵本作りをしているんですか? 読者に自分の思いを伝えるために、どんな工夫をしていますか?
長田:いや、そもそも絵本を描いてる時、テーマをはじめに設定して書くとか、「こういうふうに思いが届けばいいな」とか、全然ないですよ。まずは僕が圧倒的に楽しんで書く! 描く! これに尽きます。身も蓋もないですけど、完成したらそこで作品自体は僕の中で完結しているから、もう僕の意思は関係なく、読み手に委ねている感じです。
イモリ:え、そうなんですか!?
長田:僕、基本的に同時並行で複数の作品を作っているんです。完成した作品について、刊行後に、思わぬ感想が来ることを楽しみにやっていますね。
描いている時って自分自身の不思議な感覚にタッチしてる感じがあるから、そう簡単にね、人に「わかるわかる」って言ってもらえるようなものじゃないと思うんですよね。僕は「不思議な感覚」を絵本にしているわけです。
イモリ:「不思議な感覚」……? 確かに長田さんの絵本って不思議な作品が多いですけど……。
長田:だいたい読者からのレスポンスって、僕の中で浮かび上がってきたその作品のテーマ性みたいなものとは全然違うものへの感想なんですよね。作者の僕がいちばんビックリします。そういうレスポンスをたくさん浴びせられると、僕自身も「おお、そういう見方があったのか!?」と思ったりしてね。やっぱり本っていうパーソナルな表現物って、そういう要素があるんでしょうね。
だからなるだけ自分自身も描いている時に、作品にどこか永遠に付き合っていけるような、絶妙な疑問が含まれているようなものになったらいいなと思ってます。何度も読んでもらいたいですしね。はっきりと何かを提示してるわけではなく、じわりと滲ませるようなことが好きです。
すぐ「わかっちゃう」とつまんないでしょ? アレ、僕だけ?
イモリ:うーん、どうだろう。
長田:僕、ドライブが好きなんですけどね、そういえば以前、出版社の人に「長田さんって車の運転中、何考えてるんですか」って聞かれて、その質問にハッとしたんです。まず、そのこと自体考えたことがない、ということに気づいたんです。絵本作ってるのもドライブするのも、同じく好きだけど考えながらやってないですね。
運転中って、考えようと思ったらいろんなこと考えられますよ。でも無心でやってます。世の中、常日頃いろいろ考えを巡らせている創作家の方もいるでしょうけど、僕は別に、「暇があったら考えちゃう」なんてことはないですね。運転も絵本作るのも好きだから、考えなくともできるのだ!
でもね、こうやって会話していて、何か問われたら出てくるものもあるんですよ。そこで急に僕は考えるんです。で、ちょっと支離滅裂でも、一応僕のニュアンスみたいなものが言葉になって出てくる。その自分の「感覚」の振れ幅みたいなものが、おもしろいなって思うんですよね。
イモリ:そういう「感覚」を絵本に落とし込んでいるんですね。具体的にまずどうやって絵を描いているのですか?
長田:僕ね、「作品を作る」っていうより「作品ができる」タイプの人だと思うんです。自分の中から作品を念出していくというよりも、「できる時はできる」みたいな人なんですよ。
イモリ:え、どういうことですか?
長田:最初の一筆。こいつができれば大抵できるんですよ。最初の一筆を描いて「いやこれボツだな」ってなったこと、今までないんですよね。
あと、大まかに全体の構想を描いて順番に作るという方法はできない。一筆目、「なんかいけるな」って感覚があれば作品は「できる」んです。文章やテーマや設定など、細かい作業は全て後から!
あとは、できたイメージをいったりきたり、引きのばしたり縮めたり、自由自在に楽しみます。そういう作業ってとても個人的なものだから、自分で組みたてたい僕にはピッタリ合っているんです、絵本を描くってことは。ちなみに完成度とか評価は、もう読み手の皆さんにお任せします。