あるところに一人の編集者がいました。

 彼女は昔、出版社というところで本づくりをしていましたが、あるとき思い立って、一人で活動することに決めました。

 一人で活動するといっても、編集者がたった一人存在するだけでは、本は生まれません。まずは「本の中身」がなければ……。

 そこで、この編集者は、一緒に本づくりをしてくれる人たちと、「本の中身」をつくりだすことにしました。「本の中身」をいったんインターネットの世界に出して、この「中身」を楽しんでくれる読者の人たちを探すことにしたのです。

 そしてこの編集者には、ウェブサイトをつくるとき、もう一つ考えていたことがありました。それは「美術や、デザインや、物語、音楽、ものづくりなどの世界を通して、この世の中を眺められるような本をつくりたい」ということでした。

 普段、「芸術書」や「アート系」と呼ばれる本は、その趣味に合う読者の人たちだけで楽しむものだと思われがちです。でももし、何かの作品や作り手との出会いによって、今までとは違う見方で、ものごとを捉えられるようになったら……、ちょっと人生が楽しくなる気がするのです。この編集者は、そうしたものを紹介する本をつくりたいのでした。

 この「織言堂」という名前のついたサイトは、そんな編集者が始めた小さな提案書です。

 少しずつ、少しずつ、連載記事を増やしていく予定です。
 どうぞみなさん、のんびりとお付き合いください。

編集者 杉山